2010年9月4日土曜日

「夢を実現した男」(2)




彼の夢には前例がない。

こう返事してしまった場合、

あなたなら何から始めるでしょうか。


私は彼が夢を抱くに至った気持ちを徹底的に聴くことから始めた。

なぜなら、夢の実現の出発点は彼の気持ちであり、

それだけにもし夢の捉え方が少しでも違っていたなら、

相談はピントがぼけたものになると思ったからである。

さらに気持ちを聴く過程からは次の効果を生み出される。

    私は彼の気持ちを深く理解する。

    彼は自分の気持ちをさらに明確にする。

    そしてより明確になった気持ちを共有する。

つまり夢を追う同志になれるのである。

こうした心理上の絆ができるかどうかが、

今後の相談を成功させるかどうかの決め手になる。

この絆ができることを専門用語では「ラポールの形成」という。

私は彼が夢を抱くまでの全過程について

夢を「軸」に気持ちを聴いていった。

    小学校、中学校のときの思い出

    高校は親元を離れての生活だったこと

    販売という職業に就いた経緯

    仕事のスタイル、成果、能力ややりがい

    或いは仕事から学んだことや新しい着眼点

    仕事人生と家族との関係性

    やがて実母の世話に直面

    家族の絆と仕事人生の振り返り

こうして子どものころから現在までの気持ちを聴くプロセスにより、

夢が必然的に生じたことが明確になった。

つまりその夢を共有したのである。

彼は目を輝かせて言った。

「相談に来て良かった」

この瞬間から夢を具体的に実現するための共同作業が始まった。