2010年8月25日水曜日

「夢を実現した男」(1)




就職の相談をとおして最近、
いろいろ感じるところがある。

何例か取り上げてみたい。

1.「夢を実現した男」(1)

その男が私のもとに来たのは、
まだ寒い2月初旬であった。

「長年勤めた会社を年末に退職しました」

理由はこうだ。
販売部門のトップで仕事をしてきたが、
55歳になったある日、
彼ははた、と気づいた。

「建材の販売は自分にとって何だったのか」

この疑問の切っ掛けは「家族」との関係だったそうである。

「今後残された人生は人に喜ばれる仕事をしたい」

この思いが日増しに強くなり、
販売で培った経験と勘が働き一つの「夢」を描いたのだ。

「福祉・介護の現場と建材の販売を結びつける専門家になりたい」

この仕事は今後社会が必要とするものである。

利潤目的ではなく人に喜ばれる仕事にしたい。

この思いを福祉・介護現場の人に話したが、
「夢物語」と一笑に付されたようである。

しかしこのことは却って男の思いを強めた。

そして私のもとを訪れたのである。

彼は言う。
これまでも「ダメもと」精神で販路を拡大してきた。
この夢もその精神でやっていきたい。

こう語る小柄な男には闘志がみなぎっていた。

「全く未知数ですがあなたの夢にお付合いしましょう」

私もある意味、無謀な約束をしてしまったものだった。

私の侠気(おとこぎ)と技能士魂がそう返事させたように思う。

そしてこの日から彼の夢の実現に辛苦を共にすることになるのである。


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