2011年12月27日火曜日

クリスマス・プレゼント



「こんばんは!」


クリスマスの夜、買い物をしていると不意に声を掛けられた。

振り返ると爽やかな青年が大きいカバンを抱えて立っている。


「あっ、A君」

一瞬、み間違えたかと思った。


というのも私の知っているA君は、

あいさつなど、礼儀作法はハチャメチャだったからである。

A君の両親、家族も同様である。

だからA君には余り良い印象を持ってなかった。


「どうしたん、クリスマスに?」というと、

A君は次のように話してくれた。


高校を卒業して就職したけれど、

好きだった「絵」が忘れられない。

家で絵を描くこともあったけれど、

やっぱり大学で絵の勉強をしたい。

4年間、仕事で貯めたお金を学資にして大学へ行こうと思う。

この夏で仕事を辞めて今は画塾の帰りです。


そう語る青年は私の知っているA君ではない。

そこには目標を見つけ、それへ邁進する自信にあふれた青年がいた。


更に、「Kさん、Sさんはお元気にされていますか?」

私の子どもへの配慮も忘れない。

また、話す表情、態度など、すっかり大人である。


職場で身につけたビジネス・マナーが家庭教育を凌駕し、

潜在的に持っていた他者への思いやりなどが開花したのだろう。


「男子三日会わざれば刮目(かつもく)して見よ」


私は人間の自己成長を軽んじていたように思う。

彼と対面した5分間ほどは、

驚きの余り刮目(かつもく)しっ放しだったろう。

人の成長、可能性を無条件に信じることが出来なかった自分が恥ずかしかった。


「センター試験も近いし、風邪などに気をつけて頑張ってな!」

「ありがとうございます。がんばります!」


A君との再会はややもすると奢りそうな私へのクリスマス・プレゼントだった。


みなさんはどんな良いクリスマス・プレゼントを受け取ったでしょうか?


2011年12月10日土曜日

「今、現在」・「時」「時間」



実生活上、時間に追われることも多い。


「時」、「時間」は「今、現在」の実生活にどのように現れるのだろうか。


「時」は過去へと流れ去る、とよく言われる。


「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(方丈記)などは、

過去へと流れ去る「時」を前提して世の実相を綴ったものなのだろうか。


普通の生活の中でも、

『「時」、「時間」は一瞬、一瞬過ぎ去るから大事にしないといけない』

などと言われる。


しかし、私はこの目で「時」が「流れ去っている様子」を見たことがない。


見えるものは、常に「今、現在」の世界であり、

その世界のなかで確かに生存している自分がいる。


むしろ「時」、「時間」は流れ去るのではなく、

常に「今、現在」の中に蓄積して行っている、

と捉えるのが実態にあっているのではないか。


例えば、就職支援をするとき、

「これまでの仕事経験の中から、今あなたの中にどのような仕事力が蓄積されていますか」

「今まで蓄積してきた仕事力をこれから就く仕事にどのように生かしますか」

というように、過去-現在-未来を「時」、「時間」の蓄積と捉えるのです。


こうした経験から、過去の蓄積が常に「今、現在」を創っている、

今存在する世界、今ここにいる自分は「常に実存する」ものであり、

決して「今、現在」は「時」、「時間」によって流れ去るものではない、

と実感するのです。


だからこそ、今の自分、現在の世界の内に過去からの蓄積の意味や法則性を見出して、

未来の自分、未来の世界を描くことができるのです。


このようにして「今、現在」の内に未来を計画的にデザインするとき、

まだ実存しない未来が「今、現在」の内に統合され、

未来を自己のものとして「今、現在」を生きることができる、と思うのです。


2011年12月1日木曜日

1,000円札




昨日、京都市北部のハローワークに就職支援セミナーで出講しました。


参加者の一人に40才代の女性がおられ、

お母さんも一緒にセミナーに参加されました。

なんでも30年近く勤続してきた会社が経営不振のため、

給料の遅配が続き辞めざるを得なくなった、とのことです。


たまたまハローワークに来たところ、

職員さんに勧められてセミナーに参加されました。

というのも、セミナー後に分かったことですが、

今日、履歴書を持って面接にいくことが急に決まったからなんです。


この日のセミナーは、就職活動の基本、及び実践コースです。


私も事情が分かってなかったのと、

例え分かっていてもその方のためにだけ、

翌日の面接に合わせてのセミナーはできません。


終了後、職員さんから事情を聞かされて大慌てで個人教授です。

と言っても、ハローワークは17時15分で閉庁ですから、

近くの喫茶店で履歴書と面接について、

その日のセミナーを土台して2時間近く対策を話し合いました。

親子で一生懸命に話を聞いてくれました。

帰りの電車ぎりぎり、喫茶店を後に駅に向かったのです。


ところが、後ろから必死の形相でお母さんが追いついてきて、

「少ないけど気持ちです」と握りしめた紙包みを渡そうとします。

「お母さん、生活も大変ですのに結構ですよ」

私とお母さん2、3回、押し問答があったのですが、

お母さんのお気持ちをいただきました。


電車に乗って開けてみると1,000円札が入っていました。


厳しい生活の中でのこの1,000円。

お母さん、あなたのお気持ちを無駄にしないよう、

これからも仕事を探される方の力になるよう頑張ります!

1,000円札を前に自然に湧き上がって来る感情でした。


この仕事をして本当に良かったです。

お母さん、ありがとうございました!